賃料滞納対策

不動産の借主が賃料を支払わずにいる場合に、どのような対処をすべきでしょうか。
まず考えられることとしては、賃料滞納をし続ける借主に対して立ち退きを請求すること、つまり、賃貸借契約解除を請求することです。

 

しかし、賃料滞納をしているからといってただちに貸主から契約解除を申し出ることはできないです。というのも、法律上は建物の貸主が賃貸借の解約の申し入れをした場合においては、建物の賃貸借は解約の申し入れの日から6ヶ月の期間を経なければできないからです(借地借家法27条1項)。

 

また、貸主からの建物の賃貸借契約の解約申し入れは正当な事由がなければできないこととなっており(同法28条)、1、2ヶ月分の賃料滞納だけでは立ち退きを請求するのは困難であると考えられます。要するに、建物の賃貸借契約については、借主に大きな保護が与えられていることで、貸主からの賃貸借契約の解除が難しいということです。

 

そこで、真正面から滞納されている賃料を回収することを考える必要があります。

 

簡易裁判所による低額訴訟をすることも考えられますが、やはり訴訟をすることは時間的にも、経済的にも費用がかかります。

 

まずは、内容証明郵便による滞納賃料の支払督促状を送ることが挙げられます。内容証明郵便とは、自己が有している債権等の存在・内容を相手方(債務者)に知らせるための郵便です。これにより滞納賃料の支払い督促と支払いがない場合の契約解除の通知をすることができるわけです。

 

入居者が内容証明郵便を受けて、その内容に合意すれば万事解決ですが、合意に至らないときもあります。この段階で調停や訴訟など、裁判所を用いた立ち退きの強制執行が考えられるわけですが、その際にもこの内容証明郵便は証拠として提出することができます。

 

また、滞納家賃及びその遅延損害金も法的には金銭債務として捉えられます。これが何を意味するかというと、滞納家賃を放置していたら時効にかかり、入居者が滞納家賃を支払わなくても良いことになってしまうということになります。

 

このように、入居者の債務の時効が完成しないために、支払督促は意義を有します(民法147条1項2号)。

 

また、賃貸契約書を公正証書とすることも考えられます。公正証書とは、公務員である公証人が、その権限に基づいて、私的な文書(例えば契約書など)を公文書にしたもののことをいいます。賃貸借契約を公正証書とすることのメリットは、裁判所の強制力を用いて滞納賃料を回収できることです。

 

具体的には、公正証書は裁判所が強制執行をすることができる債務名義の1つですから(民事執行法22条5号)、確実に賃料債権を満足させることができます。公正証書の作成には、弁護士や不動産流通推進センターなどの仲介業務に請け負いをするという方法もあります。

 

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田中 涼Ryo Tanaka

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  • 大阪弁護士会(登録番号 45477)
著書
  • 「弁護士の顔が見える 中小企業法律相談ガイド」
    大阪弁護士会協同組合企画編集
経歴
  • 昭和56年 出生(大阪府箕面市)
  • 平成12年3月 桃山学院高校卒業
  • 平成14年9月ポートランド州立大学に留学
  • 平成17年3月 早稲田大学人間科学部卒業
  • 平成20年3月 大宮法科大学院修了
  • 平成22年9月 司法試験合格
  • 平成22年11月 司法修習生(64期)
  • 平成23年12月 弁護士登録(大阪弁護士会)、坂東・田中法律事務所に就職
  • 平成25年9月 アパレルメーカーに転職(兵庫県弁護士会)
  • 平成27年1月 当事務所に復職

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