「大家さんから建替えのために出てほしいと言われました。引越し代は提示されましたが、新しい住まいも決まっていません。通知の日までに退去しなければなりませんか」
先日、このような趣旨のご相談をいただきました。
結論からいうと、貸主から立退きを求められても、通知に書かれた日までに必ず退去しなければならないとは限りません。契約と立退きの理由を確認してから返答します。
ただし、普通借家か定期借家か、貸主都合の申入れか契約違反による解除かで、確認すべき条件は変わります。
このページでは、契約の確認、立退きの理由、移転条件、合意書へ署名する前の注意点を解説します。
まず「普通借家」か「定期借家」かを確認する
賃貸借契約書と、契約時に渡された説明書類を見てください。普通借家では、貸主からの更新拒絶や解約申入れに正当事由が必要です。契約期間が終わる、所有者が変わったというだけで、直ちに退去が決まるものではありません。
定期借家は、適法に締結されていれば更新なく期間満了で終わる契約です。ただし、契約時の説明や書面、終了通知など、確認すべき点があります。「定期」と書いてあるかだけで結論を出さず、関係書類をまとめて見ます。
なお、家賃滞納や無断転貸などの契約違反を理由とする解除は、貸主都合の立退きと検討の仕方が異なります。届いた通知がどちらの理由なのかを最初に区別してください。
建替えの必要性と、自分が使い続ける事情を並べる
普通借家の正当事由では、貸主・借主双方が建物を必要とする事情、これまでの契約経過、利用状況、建物の現況、立退料の申出などが考慮されます。「古いから」「建て替えるから」という説明だけで、判断に必要な情報がそろうわけではありません。
- 老朽化や危険性について、どのような調査・説明があるか
- 通院、通学、介護など、その場所に住む必要があるか
- 店舗なら、移転による休業や顧客への影響がどの程度あるか
- 代わりの物件を探せるか、家賃や設備条件がどう変わるか
感情的に反対するより、困る事情を具体的に伝える方が話し合いの材料になります。引越し業者の見積りや近隣物件の募集資料も、その負担を説明する助けになります。
立退料は「家賃の何か月分」と決めつけない
立退料に、すべての物件へ当てはまる定額表はありません。提示額だけを見るのではなく、引越し費用、新居の初期費用、家賃の増加、店舗設備の移設や休業など、何を補う条件なのかを確認します。
例えば引越し代だけが提示されても、新居の敷金・礼金や設備工事を自分で負担できるかは別の問題です。一方、費用として挙げたものがすべてそのまま認められるわけでもないため、項目と根拠を分けて交渉します。
金額に加えて、支払時期も大切です。退去後の支払いしかない条件では、引越しに必要なお金を先に用意できないことがあります。
署名する前に、退去日とお金以外の条件も読む
合意書には、退去日、立退料の支払日、敷金の精算、原状回復、残置物の扱いなどが記載されます。「ほかに一切請求しない」という条項が、未精算の敷金や別の問題まで含んでいないかも確認してください。
回答を急かされても、条件が分からないまま署名する必要はありません。検討時間が必要なことを伝え、通知や提案書を保管します。立退きに納得できないからといって、家賃の支払いまで止めるのは別の紛争を招きます。
通知と契約書をもとに、返事の仕方から相談する
住み続けたいのか、条件が整えば移転したいのか、まだ決められないのか。その段階の気持ちをお聞かせください。貸主の申出にどう返事をするか、どの条件を優先して交渉するかを整理します。
道路整備や再開発事業の通知が届いている場合は、通常の貸主との交渉とは手続が異なるため、事業名や行政機関から届いた書類も一緒にお持ちください。
まとめ
まず賃貸借契約書と届いた通知を保存し、普通借家か定期借家か、退去を求める理由は何かを確認してください。
立退料は一律に家賃の何か月分と決まるものではありません。引越し費用や新居の初期費用、店舗なら休業や設備移転の負担を項目ごとに整理します。
退去日、支払日、敷金、原状回復などが確定していない合意書には、急いで署名しないことが大切です。
住み続けたいのか、条件が整えば移転できるのかも含め、通知と契約書をもとに一緒に整理しましょう。
