「ブロックしても別のアカウントから連絡が来ます。投稿していない行き先まで知られ、『会いに行く』と言われて怖いです」
先日、このような趣旨のご相談をいただきました。
結論からいうと、ネット上だけの接触でも放置せず、証拠を保存して安全を確保し、怖いと感じている段階で警察へ相談してください。
相手が近くにいる、待ち伏せされている、危害を加えると告げられたなど、生命や身体に危険が迫っているときは110番です。緊急でない相談は、警察署や警察相談専用電話「#9110」が入口になります。
このページでは、違法性を考えるポイント、証拠の残し方、警察と弁護士の役割、匿名の相手を特定できる場合を順に説明します。
ネットストーカーはどこから違法になるのか
「ネットストーカー」は法律上の名称ではありません。オンライン上の行為であっても、ストーカー規制法が定める行為や、脅迫、名誉毀損、プライバシー侵害、不正アクセスなどに当たるかを個別に確認します。
見るだけ・フォローするだけで直ちに違法とは限らない
SNSを閲覧している、フォロー申請が届くという事実だけで、直ちに犯罪やストーカー行為になるとは限りません。一方で、拒否した後も別アカウントから接触する、行動を監視していると告げる、面会を繰り返し求めるといった行為が重なると、評価は変わります。
回数だけで線を引くのではなく、相手との関係、連絡を拒否した記録、行為の内容と継続性、恐怖を感じるようになった経緯をまとめて判断します。
ストーカー規制法以外の問題になることもある
ストーカー規制法では、恋愛感情その他の好意や、それが満たされなかったことへの怨恨を充足する目的などが問題になります。この要件に当てはまるか分からない場合でも、次のような別の権利侵害や犯罪が問題になることがあります。
- 危害を加える、家へ行くなどと告げる行為
- 実名、住所、勤務先、家族の情報などを公開する行為
- 事実と異なる中傷を繰り返し投稿する行為
- アカウントへ不正にログインしたり、他人になりすましたりする行為
- 性的な画像を公開すると告げる、または実際に公開する行為
「ストーカー規制法の対象でなければ何もできない」ということではありません。実際に行われていることから、使える対応を整理します。
SNS上の行為ごとに、残す証拠と相談の緊急度を分ける
相談時には「ネットストーカーされています」とだけ伝えるより、行為を具体的に示した方が状況を共有しやすくなります。
拒否後もDMやコメントが続く
確認したい点:連絡を断った後も続いているか、別アカウントが使われているか。
残しておくもの:メッセージ全文、日時、拒否した記録、各アカウントのURL。
行動を監視していると告げられる
確認したい点:投稿していない場所や予定まで把握されているか。
残しておくもの:相手の発言、実際の行動、位置情報を含む投稿の有無。
住所・勤務先・家族を晒される
確認したい点:公開範囲、拡散状況、現実の接触につながっているか。
残しておくもの:投稿URL、投稿全体、検索結果、閲覧日時。
「会いに行く」「危害を加える」と言われる
確認したい点:具体的な場所・日時・方法への言及があるか。
残しておくもの:メッセージ、録音、着信履歴、相手を示す情報。
待ち伏せや勤務先への接触がある
確認したい点:ネット上の行為が現実の接触へ広がっているか。
残しておくもの:日時と場所のメモ、防犯カメラ、目撃者、相談履歴。
危険の予告や現実の接触がある場合は、証拠を完璧にそろえてからではなく、安全を確保したうえで警察へ相談してください。
被害に気づいたら、返信より先に証拠と安全を確保する
投稿の一部ではなく、前後関係とURLを保存する
スクリーンショットには、本文だけでなく、アカウント名、投稿日時、投稿URL、前後のやり取りが分かる範囲を含めます。可能なら画面全体とURL欄も保存してください。アカウントが削除されたり、表示名や画像が変更されたりすることがあるため、プロフィール画面とURLも別に残します。
複数のアカウントが同一人物だと思われる場合は、確認できた事実と推測を分けます。「同じ言い回しだった」「自分しか知らない情報に触れていた」など、関連すると考えた理由もメモしておきます。
ネット外の出来事も一つの時系列にする
DM、コメント、着信、家の近くで見かけた出来事、勤務先への連絡を、一つの時系列に並べます。日付、時刻、場所、何が起きたか、そのとき誰に連絡したかを記録してください。
一つひとつは小さく見えても、並べることで頻度の増加や、オンラインから現実の接触へ変化した過程が分かります。
証拠を取るために相手とのやり取りを続けない
返信を続けたり、一人で会ったりして証拠を増やす必要はありません。ブロックや公開範囲の変更を行うタイミングは、安全面への影響も考えて警察等へ相談できます。自分で画面を見るのがつらい場合は、信頼できる家族や知人に保存を手伝ってもらう方法もあります。
アカウントと居場所につながる情報を見直す
公開範囲、写真の位置情報や背景、過去投稿、家族のアカウントから、住所や行動範囲を推測できないか確認します。不正ログインが疑われる場合は、安全な端末からパスワード、二段階認証、連携アプリ、ログイン中の端末を確認してください。
警察へ相談する目安と、持っていくもの
警察は、危険の評価、安全確保、相手への警告や禁止命令、犯罪が疑われる場合の捜査などを担います。次のような場合は、早めに相談してください。
- 自宅や勤務先、家族の居場所を知られている
- 危害や訪問を予告されている
- 連絡を拒否しても接触が続いている
- ネット上の監視が、待ち伏せや押しかけへ広がっている
- 以前の相談後に、頻度や内容が悪化した
相談時には、被害の時系列、SNSのメッセージ、着信履歴、録音、相手との関係、相手について分かっている情報を持参します。資料が多い場合は、特に怖いと感じた行為と、直近の変化を先に示すと状況を伝えやすくなります。
緊急性がある場合は110番、緊急ではないが警察に相談したい場合は最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」が入口になります。オンライン窓口への入力だけでは被害届の提出にはならないため、被害届については管轄の警察署へ確認します。
投稿の削除と匿名の相手の特定は、別々に考える
住所や中傷を書かれた場合、「投稿を消したい」のか、「誰が書いたか知りたい」のか、「損害賠償を求めたい」のかによって必要な対応が変わります。
- 投稿を消したい:運営者への報告、削除請求、必要に応じて裁判所の手続を検討します。
- 匿名の投稿者を特定したい:公開投稿による権利侵害がある場合、発信者情報開示請求を検討します。
- 今後の接触を止めたい:安全面を優先し、警察への相談と相手への連絡方法を整理します。
発信者情報開示請求は、相手が匿名なら必ず使える制度ではありません。閲覧やフォローだけの場合、一対一のメッセージだけの場合、権利侵害を示す公開投稿がある場合では、検討の前提が異なります。
公開された住所や中傷の削除については、ネット記事・投稿の削除を求める方法、投稿者の特定については、発信者情報開示請求の条件と準備も確認してください。
弁護士へ相談すると整理できること
弁護士には、警察へ説明するための被害整理、公開投稿の削除、匿名投稿者の特定、相手への警告、損害賠償請求などを相談できます。
ただし、相手へ通知を送ることが常に最初の選択になるとは限りません。相手が逆上する危険、住所を知られているか、警察へ相談済みかを確認し、安全面を踏まえて順番を決めます。
相談時点で、適用される法律や相手の身元が分かっている必要はありません。弁護士へ伝えたいのは、主に次の内容です。
- 相手との関係と、最後に直接会った時期
- 最初の接触から現在までの経過
- 相手が知っている住所、勤務先、家族の情報
- 警察やSNS運営者へ相談・報告した履歴
- 削除、相手の特定、接触停止など、特に望んでいること
「今、何が怖いか」から相談してください
被害の経緯を順番に説明できなくても構いません。「帰宅を待たれそう」「子どもの居場所を知られている」「今日会いに行くと言われた」など、現在の危険や不安から伝えてください。
ネットストーカーへの対応は、法律上の呼び名を決めることより、安全確保、証拠保存、投稿削除、相手の特定を適切な順番で進めることが重要です。手元にあるメッセージや投稿URLを確認しながら、今できる対応を整理します。
まとめ
まず、今いる場所の安全を確保してください。危害の予告や待ち伏せがある場合は、証拠を完璧にそろえる前でも110番や警察署へ相談します。
DM、投稿、着信、現実の接触は、一つの時系列にまとめます。証拠を増やすために返信を続けたり、一人で会ったりする必要はありません。
削除、投稿者の特定、損害賠償は、安全を確保した後に必要な範囲で検討します。「今、何が怖いか」から、一緒に整理しましょう。
