「中傷を書いた相手に責任を取ってほしいです。慰謝料の請求と警察への相談は、どちらから進めればよいですか?」
先日、このような趣旨のご相談をいただきました。
結論からいうと、お金や再発防止を求める民事の対応と、犯罪として処罰を求める刑事の対応を分け、望む結果に合わせて進めます。
どちらか一つしか選べないわけではありません。ただし、警察への届出だけで慰謝料が支払われるわけではなく、賠償交渉だけで刑事事件が終わるわけでもありません。
このページでは、民事請求と刑事告訴の違い、匿名の相手への対応、示談で確認する点、相談前の準備を説明します。
被害を埋め合わせてほしいなら、民事の請求を考える
民事では、権利侵害によって受けた精神的苦痛や財産上の損害について賠償を求めます。問題の投稿に加え、誰に向けられた内容か、何が違法なのか、どのような損害が生じたかを説明する必要があります。
最初から必ず訴訟を起こすわけではなく、相手方への通知や交渉で解決を目指す方法もあります。金銭だけでなく、投稿の削除や再投稿をしない約束を合意に含めることも検討します。合意できなければ訴訟などの手続を考えます。
相手が謝罪していても、どの投稿について、何を認めたのかが曖昧な場合があります。やり取りを残し、謝罪の有無と被害の補償を分けて整理してください。
処罰を求めたいときは、具体的な言葉と経緯を警察に伝える
投稿内容によって、名誉毀損、侮辱、脅迫、業務妨害などが問題になることがあります。「誹謗中傷された」という説明にとどめず、対象の言葉、公開範囲、回数、相手との関係を示します。
名誉毀損では事実を示す記載かが問題になりますが、内容が真実なら常に処罰されない、嘘なら必ず犯罪になるという単純な区分ではありません。公共性や公益目的なども検討します。刑事と民事で評価の枠組みが同じとは限りません。
被害届は被害の事実を申告するもの、告訴は犯罪の事実を申告し処罰を求めるものです。告訴が必要な犯罪には期間の制約があり、名誉毀損罪や侮辱罪では、原則として犯人を知った日から6か月という告訴期間にも注意が必要です。削除交渉が終わるまで待つべきとは限りません。
匿名でも、危険があるなら特定を待たずに相談する
相手が分からない場合、民事の請求先を調べるために発信者情報開示請求を検討します。一方、警察への相談は、自分で相手の氏名を突き止めてからでなければできないわけではありません。
「家に行く」「危害を加える」といった予告、待ち伏せ、自宅住所の拡散などがあれば、身の安全について先に相談してください。今まさに危険がある場合は110番、緊急ではない警察相談は最寄りの警察署や#9110が入口になります。
相手を誘い出して証拠を取ろうとしたり、自分で住所を公開したりする必要はありません。被害への対応が新たな危険につながらない進め方を選びます。
交渉と告訴を並行するときは、約束する範囲を確認する
相手から示談書を送られてきたら、金額だけでなく、何を解決済みとするのかを読みます。告訴の取下げ、今後の請求の放棄、口外しない約束などが含まれている場合があります。納得していない範囲まで終わらせないことが大切です。
特に親告罪の告訴を取り消すと、同じ事件について再び告訴できないという制約があります。支払約束だけで先に取り消すのか、実際の支払いとどう関係づけるのかも、署名前に確認します。
慰謝料請求や警察からの連絡を受けた側の確認点
慰謝料を求める通知が届いた時点で、請求額をそのまま支払う義務が確定したわけではありません。対象投稿、投稿者、権利侵害、被害とのつながり、金額の根拠を分けて確認します。
投稿と前後のやり取り、投稿時に見ていた資料、届いた通知書と封筒を保存してください。投稿を削除するかは別に検討し、証拠まで失わないようにします。
警察から連絡が来た場合は、担当部署、呼出しの目的、求められた資料を確認します。相手への追加投稿や証拠の処分をせず、民事の請求と刑事の対応を分けて準備してください。意見照会や開示請求も届いている場合は、開示請求を受けた側の対応で最初に確認する点を説明しています。
相談には、投稿と被害の経過を持ってきてください
投稿のURLや画面、相手との連絡、仕事や生活への影響を分けて残してください。通院や欠勤、取引先からの問い合わせがあれば、それも検討の材料になります。警察に相談済みなら、その日付と伝えた内容も共有してください。
「処罰まで求めるか迷っている」という段階でも構いません。削除、賠償、再発防止、刑事対応のそれぞれで必要な準備を確認し、今急ぐことから進めます。
まとめ
まず、慰謝料、削除、再発防止、処罰のうち、何を実現したいかを書き出してください。
投稿のURLと画面、相手との連絡、生活や仕事への影響は分けて保存します。危害の予告がある場合は、相手の特定を待たず警察へ相談してください。
示談書へ署名する前には、告訴の取下げや今後の請求放棄まで含まれていないか確認が必要です。迷っている段階でも、優先する対応を一緒に整理しましょう。
