「事故後は重い物を持てず、同僚に仕事を代わってもらっています。給料が下がっていなくても、逸失利益を考えられるのでしょうか?」
先日、このような趣旨のご相談をいただきました。
結論からいうと、現在の給料が下がっていないことだけで、逸失利益の検討を終える必要はありません。まず事故前の仕事と、症状のため難しくなった仕事を具体的に並べてください。
ただし、後遺障害の認定、仕事への実際の支障、職場の配慮、将来の収入への影響によって評価は変わります。年収と等級だけで金額が自動的に決まるわけではありません。
このページでは、休業損害との違い、計算の前提、給料が維持されている場合の資料、家事や子ども、遺族のケースについて解説します。
治療中の休業と、その後の仕事への影響を分ける
治療のために仕事を休み、収入が減ったことは休業損害として検討します。症状が残り、その先の働く力や収入に影響することは、後遺障害による逸失利益の検討につながります。精神的な苦痛を対象とする慰謝料とも別の項目です。
提示書に慰謝料が載っていても、将来の仕事への影響がすべて含まれているとは限りません。「後遺障害逸失利益」の欄があるか、何を前提に計算しているかを確認してください。治療の区切りについては医師の説明も確認します。
計算式の中で、争点になる数字を見つける
後遺障害の逸失利益は、基礎となる収入、労働能力への影響の程度、その影響が続く期間をもとに考えます。将来の収入を先に受け取るための調整も行うので、単に年収へ年数を掛ける計算とは異なります。
- 基礎収入:事故前の収入や働き方を何の資料で確認したか。
- 労働能力への影響:等級だけでなく、実際の業務にどんな支障があるか。
- 期間:症状や年齢、職業などから何年間の影響を見込んでいるか。
「計算は合っている」ことと「前提の数字が適切」なことは別です。自営業なら売上と所得を混同していないか、年齢だけで機械的に期間を決めていないかなど、自分の働き方と照らして確認します。
給料が下がっていなくても、仕事の変化を残す
同僚が重い作業を代わっている、配置を変えてもらった、本人が無理をして同じ仕事を続けている。こうした事情があって給料が維持されている場合、給与明細だけでは支障が見えません。収入が変わらないからといって、相談前に切り捨てる必要はありません。
一日の作業、できなくなった動作、休憩の増加、勤務先の配慮を書き出します。配置変更の通知や勤務記録があれば保管してください。将来の影響を伝える際にも、抽象的な不安だけでなく現在の具体的な変化が手がかりになります。
家事・子ども・遺族のケースでは、給与以外も見る
家族のための家事を担っている人や、まだ働いていない子どもでは、現在の給与がないことだけで検討を終えません。家事の内容、家族構成、学業や将来の就労への影響など、立場に合わせて資料を整理します。
事故で亡くなった場合の逸失利益は、後遺障害の場合とは計算の仕組みが異なり、本人の生活費に当たる部分を差し引くことも検討します。遺族の相談では、亡くなった方の収入資料と家族の暮らしが分かる情報が出発点になります。
相談には、年収だけでなく仕事の中身を伝える
勤務先に資料を頼むなら、事故前後の仕事内容や配慮した点など、事実の確認をお願いすると伝わりやすくなります。自分で「何%働く力が下がった」と数値化する必要はありません。どの場面で支障が出るかを、普段の言葉でメモしておいてください。
源泉徴収票や確定申告書、後遺障害の結果通知、保険会社の提示書があればお持ちください。資料がなくても、「どんな仕事をしていて、何ができなくなったか」から話を始められます。
認定結果そのものに疑問がある場合は、金額の計算と分けて検討します。後遺障害の認定結果を見直したいときも参考にしてください。将来の生活に関わる部分を、示談前に確認しましょう。
まとめ
逸失利益を確認するときは、まず治療中の休業と、症状が残った後の仕事への影響を分けてください。
基礎収入、働く力への影響、影響が続く期間という計算の前提を、自分の仕事と資料に照らして確認しましょう。
給料が同じでも、配置変更、同僚の補助、休憩の増加などがあれば記録してください。給与明細だけでは見えない支障があります。
源泉徴収票や確定申告書、結果通知、仕事の変化が分かる資料をお持ちください。将来の影響を示談前に一緒に整理しましょう。
