「給料日に入金がなく、会社からは『苦しいので待ってほしい』と言われました。生活費にも困っています。どう請求すればよいですか」
先日、このような趣旨のご相談をいただきました。
結論からいうと、支払日を過ぎた給与を月ごとに確定し、対象月、未払い額、支払期限を会社へ書面で確認します。
ただし、手取り額と額面額の差がすべて未払いとは限りません。会社が倒産しかけている、金額を争っている、合意書への署名を求めている場合には、選ぶ手続も変わります。
このページでは、未払い額の確認、会社への請求、労基署などの利用、回収を急いだ方がよい場面を解説します。
給与明細の金額と、実際の入金額を月ごとに比べる
雇用契約書や労働条件通知書で、基本給・手当・締日・支払日を確認します。給与明細があれば、通帳や口座の入金履歴と並べ、全額未払いなのか、一部だけなのかを記録してください。
手取り額は税金や社会保険料などで変わるため、契約上の額面額との差がすべて未払いとは限りません。「研修費」「損害金」など見慣れない控除があれば、その根拠を会社に尋ねます。給与明細自体が出ていない場合も、採用時のメール、求人票、過去の入金履歴が確認の手がかりになります。
残業代だけが足りない場合は、勤務時間の計算が別に必要です。残業代を確認するための記録と計算のポイントをご覧ください。
退職や引継ぎの問題と、給与の支払いを混ぜない
「急に辞めたから払わない」「会社に損害を出したので給与から引く」と言われても、その説明だけで賃金不払いが正当化されるわけではありません。賃金は原則として全額を支払うルールがあり、会社の損害の主張は別に検討する必要があります。
退職後に請求した賃金については、原則7日以内に支払うルールもあります。金額に争いがあっても、争いのない部分はこの対象になります。返却物や引継ぎが残っているならそれにも対応しつつ、支払いと引換えに何でも承諾しないようにしましょう。
「この金額を受け取ったら一切請求しない」という書面を出された場合は、未払い給与のほか、残業代や退職金まで含んでいないかを確認します。
会社の「待ってほしい」に、期限と内訳を求める
会社へ連絡するときは、対象月、未払いと考える額、支払予定を確認したい旨をメールや書面に残します。すでに口頭で約束した日があるなら、その経過も記録してください。将来の支払いを約束された場合も、未払い額を会社が認めているか確認できる形が役立ちます。
何度も期限が延びる、会社と連絡がつかない、事業所が閉じている場合は、待ち続けるより次の手段を検討する段階です。給与などの請求権には支払日から進む時効があり、現在の賃金請求は当分の間3年が基本です。退職金は5年で、同じ扱いではありません。
労基署への申告と、裁判での回収は役割が違う
賃金不払いは労働基準監督署に相談・申告できます。雇用条件、勤務の記録、明細、入金履歴を持参すると、何が支払われていないかを説明しやすくなります。
一方、会社が雇用関係や金額そのものを争う場合、交渉や労働審判・訴訟などで請求を進めることもあります。労基署へ相談しただけで、時効への対応や強制的な回収まで完了するわけではありません。手続の選択は並行して考えます。
会社が倒産している場合には、要件を満たせば未払賃金立替払制度の利用も検討できます。事業が続いているか、退職日、未払いの対象が何かによって確認が必要なので、閉鎖や倒産の知らせも保管してください。
「今月の生活が持たない」という事情も最初に伝える
相談のために、正確な請求書を自分で完成させる必要はありません。何月から、いくらくらい入っていないか、会社が何と説明しているかからお聞かせください。
勤務を続けたいのか、退職済みなのか、会社から合意書への署名を求められているのかも重要です。支払いを求める窓口と期限、必要な記録を整理し、会社への伝え方から考えます。
まとめ
まず雇用条件、給与明細、入金履歴を月ごとに並べ、何月分がいくら不足しているかを確認してください。
会社へは対象月、未払いと考える額、回答と支払いを求める期限を伝え、やり取りを残します。
期限が何度も延びる、連絡がつかない、事業所が閉じている場合は、時効や会社の状況も踏まえて次の手段を早めに検討しましょう。
請求額を自分で完成させられなくても、生活への影響と手元の資料から、何を優先するか一緒に整理しましょう。
